行動学入門 三島由紀夫著

昭和の文豪、三島由紀夫氏が自決した年に出版されたエッセイ。思いの外読みやすくて面白くて勉強になる。とくに「おわりの美学」の部分は、著者本人もふざけて書いたというだけあって、笑える部分もあり、読みやすかったです。 行動編では、当時としてはタイムリーなヨド号ハイジャック事件を例にした文章がある。その中で、人間は行動している時は、不思議と危険を感じないという言葉が印象的だった。心配や不安を感じるのは、行動の前なのかもしれない。確かにスポーツで試合本番に臨んでいるアスリートの人たちは、競技中は心理の暇もないほどの状態で目の前のことに集中していると思います。行動に移す際、ある程度の筋道や、スモールステップを想定するのは大事ですが、考えすぎは行動を阻害する壁にもなりうる。バンジージャンプも本番よりもやる前の方が怖いのかもしれない。「おわりの美学」は、読みやすい中にも、著者の自決につながる死生観が見えかくれしている。特に「童貞のおわり」や「英雄のおわり」「世界のおわり」にそれが色濃く現れている気がする。女性なら誰もが悩むであろう「嫉妬のおわり」には、「うつ病は人生に絶望している状態で、嫉妬はまだ人生に希望を持っている状態である。」という言葉がある。嫉妬が生きる原動力になるというのは、分かる気はする。あの有名なマンガ「宇宙兄弟」も嫉妬がテーマになっていると聞いたことがある。絶望よりも希望があった方がましではあるが、それに飲まれると、吐き気しかしないので、人間が誰しも持っている自然な感情だと認めよう。そして、なるべく考えないようにするのがいいかもしれない。その後の「革命哲学としての陽明学」に続きます。陽明学は著者の最期や大塩平八郎の乱など、歴史上の偉人を壮絶な死に追い込んだ、なんかヤバそうな学問なのだろうか。
陽明学について調べてみる。陽明学は心学とも言われる。簡単にいえば、知識だけを頭に詰め込むだけでなく、心の歪みを正すことが重要であるらしい。つまり、心も掃除や洗濯が必要ですよということでで、自己啓発や仏教も心理学も哲学もスピリチュアルなものまでも、基本になっているのは、陽明学だということを学びました。養命酒? ちょうど夏の疲れが出る頃ですな。